《MUMEI》

繋いだ手は暖かくて、私はいつの間にか、淋しくなくなっていた。

―しばらくして。

「あ…」

私は、私を探す父さんを見つけた。

「あれ、ちちおや?」

『なかむら しん』君の言葉に、私は頷いた。

「じゃ、もうへいきだな」
私を見つけて駆け寄ってくる父さんを見て、彼は、繋いだ手を離した。

「じゃあな!」
「…ありがとう」

笑顔で去って行く彼の後ろ姿を、私はいつまでも見つめていた。

その、『なかむら しん』君を、中学の入学式の日、桜の木の下で見つけた時は、本当に驚いた。

ただ、私はすぐに仲村君がわかったけれど、彼は私がわからなかった。

(当たり前よね…)

一度しか会っていないし。
仲村君と同じだった身長は、仲村君を追い越していたし。

体重は、…標準をはるかにオーバーしていたし。

―それでも。

三年間、ずっと見つめていた。

優しくて、正義感が強くて、友達思いな…

いろいろな仲村君を知って、どんどん好きになっていった。

卒業したら、私は女子高に通う事になっていた。

両想いになれるはずはないと諦めていたが…

離れ離れになる前に、私はどうしても、仲村君に、気持ちだけでも伝えておきたかった。

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