《MUMEI》

「…蓬田さん、意識が戻りましたか」


その医者は、女の人を俺から優しく引き離しながら、

にっこりと微笑んで言った。



―…あ!!


そうだ!!


蓬田が、線路のネコ助けようとして―!!!



「あ、あの!!!」



おれは、医者に声をかけた。


…あれ、なんか声、おかしいな…



「あの、蓬田は…無事だったんすか…??」



医者と、女の人が目を丸くする。



―…え??



まさか―…




しばらくの沈黙の後、2人は同時にふき出した。



「…何言ってるの、かなめ!!」


「…少し、混乱しているようですね。
外傷は特にありませんが、
今日1日は、ゆっくり休んでください」



…何言ってんだ??この2人…


おれが口を開きかけた、その時。



「先生!!205号室の患者さん、意識戻りました!!」



ばたばたと看護婦さんが駆けて来た。



「…そうか!!よかった、今行く!!」



医者も、扉へ向かう。



そして、病室を出る間際に、


おれにこう言った。



「―…君を助けてくれた、椎名君。
…彼も、意識が戻ったそうだよ」



―…はあ??



あの、おれが椎名なんすけど…


意味、わからん。

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