《MUMEI》 偶然、通りかかった仲村君が、倒れている木下君を見つけ、駆け寄ってきた。 木下君は、気絶していた。 「高山!」 仲村君が、私を、睨んだ。 私の体が、硬直した。 「どうせ健志が何か言ったんだろうけど、やりすぎだぞ!」 私を責める仲村君の視線が、言葉が、胸に刺さった。 気が付いたら、私はその場を逃げ出していた。 (嫌われた…) 走りながら、涙が出てきた。 もう、無理だ。 …最悪だ。 ―そして、私は、仲村君を諦めたのだ。 その後、泣いている私を発見したのは貴子ちゃんだった。 私は、貴子ちゃんだけに、この出来事を話した。 話を聞いた貴子ちゃんは、仲村君に事情を説明すると言って、現場に行ってみたが。 そこには、二人の姿はもうなかった。 仲村君は、木下君を保健室に送って、家族と一緒に帰ってしまっていた。 ―だから。 仲村君とは、これ以来、一度も会っていなかった… 前へ |次へ |
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