《MUMEI》

『えへ…。』

「えへ、じゃない、今日塾長来てんだぞ…。」

『まじで…?!…帰ろうかな…。』

パシッ

さっきもそれを使ったんだろう、数十毎は重なったプリント用紙の平面で、再度あたしの頭を軽くぶつ前田さん。


今2人が立っている場所は玄関。

全教室、講師室、塾長室、事務室、給湯室、トイレ、全ての部屋から死角。

まだ両者靴も脱いでない。


「後が面倒だろ…。」

『ですよねー…。』

「…遅れた理由は?」

『部活…。』

「っっ!!大島、それ絶対言うなよ…。」

『なんで?』

「なんで…って、はは、それ聞いたら塾長…あははっ…!」

『?』

「遅刻の理由が部活だなんて、塾始まって以来。」


確かに聞いた事ないや。





あ、今更思い出した。

そう思ったら…マズい!!


『前田さん、あたし塾長に部活入るなって言われてた…。』

「はぁ…?!」


うん、ホントに。

やっぱりあたしはここに入るにはギリギリだったらしく、「部活動はやらないで」が入塾の条件だった。

これは親も居る最終面接…三者面談の時に言われた事だ。

この日の帰りにも溜め息をついていると、親が「部活は好きにやりなさい。何もそこまで従う事はないから。」と、察して言ってくれた。

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