《MUMEI》

私が、同級会をやる居酒屋の前に着いたのは、開始時間ギリギリだった。

(もう、皆、来てるかな…)
私は、木下君以外の同級生に会うのは10年ぶりだった。

何となく、心細くなり、私は、木下君の携帯に電話をかけた。

『もしもし!』

木下君が、ワンコールで出た。
何だか慌てているようだ。
「もしもし。今、居酒屋の前にいるんだけど」
『うん』

「今から行ってもいい?」
『いや、それは、まずい』
木下君の言葉に、私は落ち込んだ。

(やっぱり…)

「来ない方が良かった?」
『そうじゃなくて』

「じゃあ、何!」

私は、つい、大声になった。
『これから、ちょっと行くから待ってて!』

木下君も必死な口調になった。

―それからすぐに、木下君が私のところにやってきた。

「…」
「何?」

木下君が何も言わずにポカンと口を開けて、私を見ていた。

「いや、高山、本当に変わったなぁと…」
「一月に会ってるでしょ?」

私の言葉に、木下君は、
「いや、でも。今日はまた、一段と、そう思う」
と言った。

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