《MUMEI》 …さっきの木下君みたいに、皆、口をポカンと開けているし。 ―それから数分後。 「いや〜、本当に綺麗になったね」 「俺、高山さんは痩せたら美人だと思ってたよ」 「どんなダイエットしたの?」 「肌キレ〜イ。い〜な〜」 … (何、この変わりようは…) そう思いつつも、私は、『冷静な大人の女性』の仮面を付けて、営業スマイルで、皆に対応していた。 何人かと、やりとりをするつもりもないのに、メルアド交換にも応じた。 やっぱり、貴子ちゃんに言われた『そのままの私』は、出せなかった。 (それより…) 私はさっきから、離れたテーブルにいる仲村君が気になって仕方なかった。 仲村君は、10年経っても、華奢な感じで、可愛い顔付きをしていた。 年齢よりも、若く見える。 (あ…) 仲村君に、木下君が何か話しかけている。 また、何か余計な事を言われたら困るから、私はさりげなく席を立って、仲村君達のテーブルに向かった。 (余計な事、言わないでよね) そんな私の気持ちが木下君に伝わったようで、彼は、私と入れ違いで、席を立った。 仲村君と二人っきり。 …それだけで、すごく緊張して、ドキドキしていた。 前へ |次へ |
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