《MUMEI》

「俺に感謝しろよ。」

恩着せがましく言っておく。

「礼は言っただろ。図々しいな。」

「形で欲しい。」

言葉では足りない。

「ほら」

佐藤は手を目の前に持ってきた。
俺の鼻先にぶつかりそうな中指だ。

「手が出たら握手だろ?」

佐藤は恥ずかしげに指を伸ばした。


佐藤の手から夏川の体温が染み入りそうだ。
この佐藤の手を握り続けて俺のだけのものにしてしまいたかった。

俺はこいつを手に入れようと触感を思い返しては誓う。

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