《MUMEI》 いつもは時計がぴたっとくっついているはずの手首を見る。 この腕に…あいつの温もりが感じられないのが寂しい… て、なんかメロドラマの俳優のセリフみたい。 「なんかあったの?」 講師が席を外すと、隣の席の梓(アズサ)が小声で話しかけてきた。 梓は今年からここに通っている。 普段の通常の授業では席は決まっていて、2年に上がった最初の授業で適当に座った席で梓と相席になった。 それがそのまま1年間継続される。 『ん〜。ホントは部活で遅れたんだけど、前田さんが裏工作してくれたみたいで…何がどうなってんだか…。』 「だから不思議そうな顔してたんだ?(笑)」 『え、してた?』 「うん。」 『うわぁ…。』 「ってか今日時計してないね?いつも着けてたじゃん。」 『…なくした。』 「うわぁ…。」 あれ?サユの時とデジャブ。 あ…。 そう言えばあの時桐子が言ったセリフ。 言い辛いけど怪しいのは先輩…とか言ってたっけ。 怪しいってなんだろ? なんで言い辛いの? 普通に、先輩が何か知ってるんじゃないかって言えば…。 あ、それだとサユとかぶって今更…か。 でもあの言い方じゃあまるで… まるで…? …。 そんな事普通に思いつくもんなの? 有り得ないでしょ。 前へ |次へ |
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