《MUMEI》

「どっちも、してないから!」
「何で!」

真っ赤になって、私が答えると、母さんが、真剣な顔で訊いてきた。

「何でって…」

…母さんは、知っているのに。

私が、仲村君に…好きな人に愛される資格がない、体だという事を。

「好きなんでしょう? それに、『そんなの』、気にならないわよ」
「なるわよ!」

母さんが指差したところを、私は両手で隠しながら、反論した。

「じゃあ、これから、どうするの?」
「母さん?」

母さんの目は、真剣だった。

「これからずっと、『そんなの』気にして、一人で生きていくつもり?
私は、可愛い志穂に、そんな人生歩ませるつもりは無いわよ!」
「でも…」

(結婚なんか…できるわけない)

「だから、私が選んできてあげるわ」
「え?」

母さんが、ニッコリ微笑んだ。

「私達が、海外出張行くの、知ってるわよね?」

母さんの言葉に、私は頷いた。

両親は二人で、来月から一年間海外出張に行く事になっていた。

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