《MUMEI》

実は、その内容は、『秀兄さんの、花嫁捜し』だった。

子供の頃は、サッカー一筋、その後は料理一筋の秀兄さんは、女性に縁が無かった。

しかし、高山家の跡取りは、秀兄さんだから、それでは困る。

すると、秀兄さんは、事も無げに、
「俺、見合いでもするわ」
と、言い出したのだ。

それで、両親が、相手を捜しに行くのだ。

しかも、一年間かけて、世界中を回って捜す、と言う。

秀兄さんは、
「俺をダシにして、海外に行きたいだけじゃないか?」
と笑っていた。

「だから、志穂の相手も捜してあげるわ」
「ちょ…」
「ちょっと、待ちなさい、華穂」

私が抗議しようとすると、父さんが、口を開いた。

「何? 大志(たいし)。 名案でしょう?」
「志穂には、ずっと好きな人がいるだろう」

父さんの言葉に、母さんは顔をしかめた。

「仲村君の事?」
父さんが頷いた。

「20年片想いして、何の進展も無いのよ!
いい加減、諦めさせた方が、いいわよ」
「…最後に、チャンスをあげたらどうだ?」

「「チャンス?」」
父さんの言葉に、私と母さんは首を傾げた。

父さんは、頷きながら、説明した。

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