《MUMEI》

「私と華穂が戻ってくるのは、来年の四月だ。
それまでに、志穂が仲村君と、進展があれば、この話は、白紙にしよう。
何も無かったら、華穂が選んだ人が、志穂を傷付けるわけはないし、とりあえず、お付き合いしてみなさい」
「進展てどこまで?」

母さんが、父さんに質問した。

父さんは、少し考えてから、
「両想い・恋人・婚約…位、かな?」

と答えた。

すると、母さんが、
「婚約以外は抽象的過ぎるわよ!」

と、抗議した。

結局、二人の話し合いの結果、『SEXまたは婚約』まで進展していたら、母さんが捜してきた結婚相手ではなく、仲村君を、私の相手として認める…という事になった。

はっきり言って、私が仲村君と、そうなる可能性は、皆無に等しい。

(それでも…)

一年間あれば、気持ちの整理がつくかもしれない。

仲村君と時々遊んで、友達になって、『彼女』でも見れば、きっと、今度こそ、諦めもつくだろう。

私はそう考えて、両親に、
「わかった。それでいいよ」

と答えた。

私の答えを聞いた両親は、マンションを出て行った。
―そして、何と。

次の日には、海外出張に出かけてしまった。

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