《MUMEI》

おれは、自分の両手を持ち上げてみる。


鏡の中の蓬田も、おれと同じ動作をする。



真っ白な、細い腕。



まるで、女みたいな、手。



そっと、顔に手をやる。


すると、長い黒髪がさらりと肩から滑り落ちた。


…は??


長い、髪…???


顔に手をやったまま、鏡を見つめる。



「あ」



声を、出してみる。


―…出たのは…まるで、女の、声。



鏡の中の蓬田は、
おれと全く同じ動作をやってのけた。



…おい、



おい、まさか…



まさか!!!



おれは


ベッドから降りると、鏡に近づいた。


鏡の中の蓬田も、おれに近づいてくる。



鏡に、手を当てる。



おれが鏡に押し当てたその手は、


女の―…


蓬田の、手だった。



…信じられ、ない。




おれは、病室を飛び出した。



―…確か、205号室、だったよな!?



廊下を駆けていく途中で、人にぶつかった。



「うわっ!!」



顔を上げると、



そこにいたのは―…





紛れも無く、







おれ、だった。

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