《MUMEI》
鏡 〈私〉
少し落ち着いてくる、
と、『清水さん』と呼ばれた熊みたいな男の人は
病室を出て行った。



…一体、何があったの―…??


ぐるりと病室を見渡すと、
ベッドの横に張ってある、
白いネコの写真のカレンダーに目が留まった。



……あ!!!



ネコ!!!


そうだ、私ネコを助けようとして―…!!



…それで、どうなったんだっけ??


私は今、こうやって生きてるし…



更に視線を巡らすと、洗面台の鏡に目が留まった。



そこに映っていたのは―…




「―…椎名くん!?」



振り返りながら叫ぶ。


…誰もいない…


…それに…



声、おかしい…



「ん゛ん!!」



咳払いをして、もう一度声を出してみる。



「あー…」



…低!?…男の子、みたいな声…



―…てか、なんで椎名くんが…


もう一度、鏡を見る。



椎名くんが、見つめ返してくる。



…おかしい。



なんで、私が映ってないの…??

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