《MUMEI》

私はベッドを降りて、鏡に近づいた。


鏡の中の椎名くんも、
同じ動きで近づいてくる。


鏡の前で立ち止まり、
両腕を目の前にかざしてみる。



右腕には、包帯。


―…程よく筋肉のついた、男の子の、腕。



髪に、顔に、手をやると、



髪は短くて、顔は骨格がしっかりとしている。



…これ、あたし じゃ、ない―…



だって、鏡の中の椎名くんも、


さっきから、私と同じ動きをしてる。



…まさか。



いや、あり得ない!!



…でも、


でも―…!!!



私は、病室の外へ飛び出した。



「うわっ!!」


―…誰かに、ぶつかってしまった。



私にぶつかって、少しよろけたその人物―…



その女の子は、



紛れもなく、







私、だった。

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