《MUMEI》

たまに、あの謎の電話で親を呼び出して、迎えに来てもらうこともあるんだけど。

なんせ、母は看護師、父は単身赴任中で、父は論外としても…

母は何かと疲れてるだろうし、滅多な事がなければ呼び出しはしない。

気分次第で母の方から来てくれることもあるけど。

今日はそんな気分でもないし。

とぼとぼと、通い慣れた夜道を歩いて帰る。

いつもの病院の前を、なんにも出ませんように、といつも通りにビクビクしながら通り過ぎ。



ああ、そう言えば更衣室で「見た」あれ…。

あの子泣いてたな〜…。



いつものコンビニで、いつも通りのガラの悪い人たちがたむろっているのを、あたしは空気だ、と言い聞かせて通り過ぎ。



結局誰だったんだろう…。

なんで泣いてたんだろ。



いつもの路地を、早く抜けたい一心で、いつも通り早歩きで通り過ぎ。



なんで今回に限ってわからないんだろう…。



いつもの公園を、夜がかもし出す雰囲気に言い知れぬ恐怖を感じながら、いつも通り通り過ぎ。



あ。

そっか。



見慣れた2台の車、木や花、祖父の影響でハマッた、父のコレクションの盆栽…到着っと。







あれは時計をなくして泣いているあたしだ。



そのまま冷めたお風呂に直行、上がって部屋着に着替え、学校、塾、両方の宿題・テストの予習をやらずにベッドにダイブして、長い1日を終えた。

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