《MUMEI》

カズ兄の背中にしがみ付いてると、香水の香りがする。

銘柄はよくわかんないけど…

バニラの甘い匂い。


あたしはこれが苦手だ。


『う゛〜。』

「なに?」

『いい匂いだね。』

「嘘つけ、お前嫌いだろ。」

『…バレた?』

「バレバレ。」

『さつきもこんな感じのが好きなんだ。』

「ああ、さつきかぁ〜。元気してんの?」

『うん!今更だけど同じクラスになったよ♪』

「…。」

『(なんか変な事言ったかな…?)』

「一葉、学校とか塾とかどうなの?」

『え…?』

「辞めてもいーんだぞ、あんな塾。」

『そんなに嫌いだったの?(笑)』

「ん?俺は全然。お前さぁ、学校行って部活やって、休みなく夜中まで塾だろ?しんどくなんねーの?」

『そんなの、お兄ちゃんもカズ兄もやってきた事じゃん。』

「まあね。」

『だから、平気。』

「よくわかんないんだけど。」


…確かに、塾入ってどうなりたいとかは…ない、かも。

ただ、あそこに通ってる以上は良い成績とんなきゃマズいし、だから…かな?

入った理由は、兄達のマネだけど…。


「とにかく、あんまり頑張んな。好きな事して、好きな高校行け。」

『うん…。』

「お、あれか?友達。」




今の生活がしんどいとか、考えたことなかったなぁ…。

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