《MUMEI》

「「おはようございます」」

「おはようございます。ありがとうございました」

挨拶する彼等に、私はマニュアル通りの挨拶をした。
(何で、仲村君がここに?!)

心臓が止まりそうな位、驚いた。

顔を上げた私を見て、仲村君も驚いたようだった。

しかし、私は仕事中だったから、振り返らずに、仕事を続けた。


仲村君と一緒にいた男性…

(確か、『ゆうき君』だ)


実は、私の通院している病院が、偶然仲村君の通っていた高校の近くで。

通り道から、丁度、グラウンドが見えた。

そこで、サッカーをしている仲村君を、何度か見かけた事があった。

…本当に、チラッと見る位だったが…

毎回、『ゆうき君』が一緒にいた気がする。

ちなみに、私が『ゆうき君』の名前を知っていたのは、近くで見物していた女の子達が、大声で彼を応援していたからだった。

(親友…なのかな?)

一緒に旅行する位だし。

私は、そう、思っていた。
数分後。

上司から、渡された、仲村君達が使った部屋の鍵を、開け、中に入るまでは…

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