《MUMEI》

「あ、すみません!」

女性と擦れ違い様に激突、スーツが多少汚れた。

「大変、クリーニング代お支払いしますね。」

「クリーニング代なんて必要ありませんよ、キスマークの一つも付けれないと男の甲斐性になりませんでしょう?」

女性の手は柔らかい触り心地だった。


昭一郎に口説いているとこを素通りされた。

つまんね、無反応だ。
俺を一族の恥とでも言わんばかりの徹底的なシカト。

俺を故意に避け、関わりたがらない。

むかつく…………。

喉奥がひりひり、何かを言いたがっている。言葉を探している。






「昭一郎さ、見えないの俺のこと。」

トイレに入って昭一郎の背後に回り込む。

「…………」

昭一郎は黙って用を足すばかりだ。




俺を見ろよ。

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