《MUMEI》

昭一郎は俺より小さい。いつから見上げなくなったのだっけ……。
俺達は兄弟なのに似てない。そのせいか昭一郎になりたがった。

キリリと吊り上がっていた目尻に憧れた。
その瞳に俺を映すだけで満足した、今も……


「こっち向け……」

耳元で女の子にねだるように切望した。

昭一郎、俺を映せよ。

俺が嫌いなら殴れ、憎め、罵れ……。



それでも聞こえてないのか、昭一郎は振り向かずに手を洗いに行く。

鏡に影のように俺が重なっていた。

昭一郎の顎を掴む。

鏡の昭一郎さえ俺を見ない。
苛々した。

俺を思い出させるため唇を重ね合う。








便所でキスだなんて、中々のハイセンスだ。

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