《MUMEI》
階段 〈おれ〉
…ここなら、誰もこないだろ―…



おれは、話し合いの場として、
非常階段を選んだ。



階段に腰掛け、『おれ』―…もとい、蓬田に向き直る。



蓬田も、1段下に腰掛けた。




「…トートツだけどさ、」




話を切り出す。




「お前、蓬田…だよな??」



『おれ』が、こくん、と頷く。



「…で、今おれ、蓬田??」



おれは、自分を指差しながら訊ねる。



また、『おれ』は小さく頷いた。




はぁあああ、



おれは、でかいため息をついて、頭を抱えた。




「…訳、わかんねー…よ…」




ふと横を見ると、『おれ』の肩は小刻みに震えていた。



「…よもぎ、だ…??」




小さな嗚咽が非常階段に響く。




「…んで…、―…なんで、こんな…」




おれだって、泣きたい。



男のクセに泣くな、と言いたい。



隣で嗚咽を漏らしてるのは、
はたから見れば男だからだ。



…でも、今おれの隣にいるのは、



女、なんだよな―…




あーもうっ!!!



おれは、再び頭を抱えた。

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