《MUMEI》

「国雄君スーツ似合うね。これで前髪後ろに流して金髪に染めたら外国人みたいだよ。」

愛知とは不思議と初対面らしい会話を楽しめた。

「金髪ですかーまだやったことないですね。」

昭一郎は元から無駄な会話は抑えてある。
やはり、俺を見ない。

「愛知さんそれじゃあホストみたいだわ。」

萌姉ちゃんの高音の笑い声はよく聞こえた。
クールにレイは食事を堪能している。フォークの扱い方が美しい。





「ありがとう、今日は本当に楽しかった。」

別れ際、愛知と交わした握手がきつかった気がした。

レイと昭一郎と三人でタクシーで帰る。

一番近いレイが先に降りてゆく。

「昭一郎って家遠いんじゃない?」

終電逃してタクシーで帰るつもりか。

「……ダチのとこ行くからいい。」

外を見たまま会話する。
ネオンがちらちら昭一郎の輪郭をなぞった。





「俺ン家来いよ」

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