《MUMEI》

「何だよ、急に!」

仲村君の手を払いのけながら、屋代君が、仲村君を睨んだ。

「だって…」

仲村君は、そう言って、沈黙した。

(言えない、よね…)

仲村君は、優しいから、木下君みたいに、私の事情を勝手に話さない。

「…」
「何なんだよ」

「まぁまぁ」

無言の仲村君を、屋代君が追及しようとしたので、私がかわりに説明する事にした。

「『美人の妹』って言うのは、私では無くて私の妹の貴子の事なんです」

「妹?」
「はい。
うちは、秀兄ちゃんと、その二つ上の大兄ちゃんと、私の一つ下の貴子の四人兄妹なんですよ」

私は、相変わらず微笑みを絶やさずに、話した。

「それより、何か注文しません?」

私の提案で、それぞれメニューに目を通し、店員を呼んで注文した。

目の前に、つまみと一品料理・それぞれの飲み物が揃った時点で、私はいよいよ本題に入った。

最初の質問は、ど真ん中直球ストレートで訊くと、決めていた。

「それで、二人は恋人同士なんですよね?」

私は、まっすぐ二人の目を見て言った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫