《MUMEI》

「ふざけんな!」

呆然とする仲村君の隣で、屋代君が叫んだ。

そして、私の…顔に向かって屋代君の拳が飛んできた!

(嘘、でしょ?!)

まったく、ためらいがない。

パシッ!!

私は、屋代君の拳を顔の前で受け止めた。

(あ、危なかった…)

私は、子供の頃、様々な格闘技を習っていた。

それに、元々人並み以上に握力もある。

それが、役に立った。

私は、動揺を表には出さず、ニッコリ微笑んだ。

「まぁまぁ、落ち着いて」
「落ち着けるか、頭おかしいんじゃないか?お前」

屋代君の言葉に、私は、一瞬ドキッとした。

(何も知らないくせに…)

「よくわかったわね」

私は、ひきつらないように、気をつけながら、笑いながら言った。

そして、『冷静に、落ち着いて』と、心の中で繰り返しながら、話を続ける。

「別に、あなた達に別れろとは言ってないわよ」

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