《MUMEI》

「あの、待ってください!!」


椎名くんのママの動きが止まる。



「あの…蓬田要の母です」



私のママが、ぺこりと頭を下げた。



「…あ、椎名みつるの母です」



椎名くんのママも頭を下げる。



「…謝らなくちゃいけないのは、家の娘の方なんです」


「…はい??」



椎名くんのママが驚いた表情になる。




「椎名くんは、娘を庇ってくれたんですよ。
…現にほら、娘はかすり傷もないし…」



…え??


どういうこと??

椎名くんが、私を―…??



「…ごめんなさい。
そして、ありがとう…!
本当に、ありがとうね…!!」


ママは、私の包帯をした腕をとって、


優しく、そういった。



「ほら、かなめもちゃんとお礼!!!」



ママは振り返って、椎名くんにそう促す。



「…あ、ありがとう…??」



困ったような顔でそう言うと、


椎名くんは恥ずかしそうに俯いた。



「そうだったの、みつる??」



椎名くんのママが私を振り返る。



「う、うん…」



―…私だって、そんなの知らなかったよ…!!



椎名くん…そんなこと一言も言わないんだもん。



すると、


とん、とわき腹を小突かれた。




『…あんたも、やんじゃないの!!
あんな可愛らしい子♪』



椎名くんのママが、小声で言った。



「…そんなんじゃ、ない…です」



椎名くんのママは、一瞬目を丸くした後、



「なーに、赤くなってんのよ!!」



と、私の背中をばしばし叩いた。



うそ、赤くなってた!?


―…それにしても、

椎名くんのママって、不思議なひと…

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