《MUMEI》

「一応、脳の方に異常はないか、
レントゲンなど撮った方がいいのですが―…」


「はい、よろしくお願いします」



えー…めんどくせ…



さっきから、蓬田のお母さんと医者は、
こんな会話ばっかりしてる。



「…では、今日1日入院、明日レントゲンを撮って、退院。
―…結果は、後ほどということで…」


「はい、わかりました」



医者が立ち上がる。



「ありがとうございました…!!」


「では、お大事に―…」



おれは、ふと思いつき、先生を呼び止めた。



「あの!!」


「…ん??どうしました??」


「あのー…お―…私が助けようとしたネコって―…」



すると、先生は首をかしげた。



「猫…??ちょっと分からないな…
―君は、猫を助けようとしたんだね??」


「え??あ、はい…」



―…おれじゃねーけど。



「…そうか、猫、好きなの??」



えっと、どーなんだろ…



「そうなんです!!この子、ちっちゃい頃から動物は大好きで…
今は、獣医さんを目指してるんです!…ね??」




蓬田のお母さんが代わりに答えて、
おれに同意を求めてきた。



「…あ、えーと、うん」



「そうか、君なら、きっと立派な獣医さんになれるよ!!
…もし、君が助けた猫のことで何か聞いたら教えるから」


じゃあ、と言って、先生は病室を後にした。



―…そっか、獣医に…


だから、『あのネコ目が見えないかも』、
とか言ってたのか。



…無事なんかなー、


あのネコは。

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