《MUMEI》
序章――秋月の夜――
 ……庭に、三つの影がある。
 庭と言ってもそう広くはなく、敷地が余ったから庭にしたと言うような素朴で小規模な庭だ。
 その庭で、影のうち、一つは立ち、二つは芝生の上に横たわっている。
やがて、直立していた影が空を仰ぐ。空に掛かっていた雲が風に押されて流れ、上弦の月が姿を現した。
 その、僅かな光に照らされて、三つの影の幽かな姿が浮き立つ。
 二つは寝間着を来た少年と少女。
 一つは袖にゆとりのある服を着た女。
 少年と少女を左右に置く形で女はその中間に居た。
 不意に、女が手を動かした。

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