《MUMEI》

 フォ……ン

 庭の草花を揺らして風が巻き起こる。そして、三人がいる下に――芝生に――魔方陣が現れる。次いで、少年少女の身体も宙に浮かび上がった。
 女は、左右の手のひらをそれぞれの額に当てる。そして、なにごとか呟くと、少年少女の額に地に現れた魔方陣と同じものが印(しる)された。印は一度淡い光を放つと吸い込まれるように消えた。印が消えると、二人の身体はゆっくりと地に降りた。
 女は、両腕を力無く下ろした。
 そうして。
 目を閉じ辛い表情を浮かべ。
「……ごめんね……」
 悲しみを湛えた声でそう言った。
 
 それは秋月の夜。
 密かに行われた儀式だった。

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