《MUMEI》
話し合い
そして、迎えた日曜日。

私は、待ち合わせ場所である、最寄り駅の西口階段付近に立っていた。

私は基本的に、待ち合わせ五分前に、現場に行くようにしていた。

時刻は、15時55分だった。
―その時。

屋代君が現れた。

「どうも」
私はそう言って、軽く頭を下げたが、

屋代君は、開口一番、
「慎にもう近付くな!」
と怒鳴りつけてきた。

「嫌よ」
即答する私に、屋代君が手を伸ばしてくる。

(何?…脅かすつもり?)

それなら…

「…あのね」

…負けない。

「痛!」

私は、屋代君の手首をギリっと掴んだ。

「このまま、貴方を傷付けるのは、簡単だけど、貴方だって人前で恥はかきたく無いでしょう?」

私は、できるだけ、小声で言った。

…西口は、表口だから、人もたくさんいたから。

そして、私は屋代君を睨んだ。

(こんなもんかな?)

屋代君の表情が青ざめたのを確認して…

「まぁ、人の話を聞きなさいよ」

私は笑顔でそう言うと、屋代君の手首を離した。

多分、今私の目は笑っていないと思う。

チラッと見ると、屋代君の手首には、くっきりと、私指の形の痣が浮かんでいた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫