《MUMEI》

(それにしても…)

このままの屋代君に誤解されたままでは、仲村君に近付けない。

私が提案した『お試し期間』は、一年間しかない。

こんなところで、立ち止まるわけにはいかない。

(あ…)

私は名案を思いついた。

「じゃあ、こうしましょう」

私の言葉に、屋代君は顔をしかめた。

(どうせ、ろくなものじゃないと、思ってるわよね)
しかし…

私の今回の提案は、屋代君には都合のいいものだった。

事実、屋代君は、受け入れた。

「絶対、守ると誓えるか?」

屋代君の確認するような問いかけに、私はいつもの笑顔を作って、頷いた。

そして、言った。

「破ったら、貴方に殺されてあげるわ」


―と。

(この位言わないと…)

屋代君は、私を信用しない。

そう、思ったから―

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