《MUMEI》
安心
屋代君との話し合いが、やっと終わった。

―ふと、見上げると。

階段の途中にいる、仲村君を見つけた。

「慎!」
「仲村君!」

私と屋代君は、同時に、嬉しそうに手を振った。

「今行く!」

仲村君は、そう言って、慌てて私と屋代君の元へ走ってきた。

(何だか、デートみたい)

…屋代君がいるのに、私はついそんな事を考えてしまった。


「さて、行くか」

屋代君は慣れた様子で、仲村君の肩を抱き、歩き出した。

「は?どこに?」

そんな屋代君に、仲村君が戸惑っている。

(本当に恋人同士、なんだなあ)

肩を抱かれた事には、仲村君は、何の抵抗もない。

私は、そんな二人の後ろに、付いていく。

仲村君が、私を不思議そうに見ている。

「三人でカラオケだろ?あ、その前に飯か」

屋代君の言葉に、仲村君が目を丸くした。
驚きすぎて、言葉も出ない…

そんな風に見えた。

ふと、屋代君が、足を止めた。

自然と、私と、仲村君の足も止まる。

「あんた、好き嫌いは?」
「特に無いですけど」

「よし!」

振り返って私に確認をとると、屋代君がまた歩き出した。
「ちょっと待て!」

仲村君が肩に置かれた腕を振り払った。

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