《MUMEI》

「はっ…も…」

苦しそうな仲村君の声。

しかし…

まだ、キスは終わらなかった。

(何?これ、嫌がらせ?)

部屋の中が暗くて良かった。

多分、化粧で隠しきれないほど、私の顔は、今…真っ赤だ。

「…んっ…」

色っぽい仲村君の声が、部屋の中に響いた。

―その時。

屋代君が、一瞬目を開けた。

私と屋代君の、視線が、合う。

(冷静に、冷静に…)

私は、心の中で何回も唱えた。

そして、いつものように、屋代君に向かって、ニッコリと笑ってみた。

『変な女』

そう、屋代君の目が語ったような気がした。

屋代君は、仲村君から唇を離した。

そして、キスでぐったりした仲村君を、優しく抱き締めていた。

―その時。

やっと、私が入力した曲のイントロが、流れ出した。

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