《MUMEI》

「まったく、君は、呼ばないと来ないな」

診察室に入ると、私の主治医の林(はやし)先生に、早速怒られた。

林先生は、この病院の院長でもある。

私は、中学生の頃から、林先生にお世話になっていた。

「…すみません」

実際、私が今日来たのは、処方箋に、『次回は診察して下さい』と書かれたメモを貼られたからだった。

私は、診察が面倒で、いつも薬だけで済ませていた。
「まったく。…調子は?」
「変わりありません」

実際、意識不明で倒れる事も、独特の頭痛も無かった。

「妊娠は?」

「…相手がいませんから」
私は笑った。

そう。

これが私が『子供ができない』…

正しくは、『作りたくない』理由だった。


…今、私が服用している薬は、胎児に影響が出るのだ。



『指の無い子供』

なんて…

作るつもりは、無かった。

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