《MUMEI》 その相手は、篠崎。 ではなく。 ナオの左隣の席の、芳人くん(ヨシトくん)。 結衣ちゃんと同じ幼稚園、小学校で、結衣ちゃんにとって幼馴染の1人。 結衣ちゃんがよく「芳人〜!」って呼んでるのを聞いていて、あたし達5人はみんな彼を芳人くんと呼んでいた。 ―席替えから数日 いつものように頬杖を付いていると、斜め後方からほっぺにべちっと何かが当たった。 『ぃでっ。』 と女の子らしからぬ奇声を上げて振り返ると、ナオがジェスチャー付きの口パクで「下!下!」と言っていた。 ? 見ると、床に消しゴム… ああ、手紙だ♪ 拾って、ケースとの間に折りたたまれた手紙を取り出し、見る。 |一葉、ヤバイ! |ヤバイ、芳人くん! |ヤバイよ一葉! |助けて>< …あたしが?? いやいや… 切羽詰るような内容に、もしかしたら本人以上に混乱した。 |どうしたの? |何があったの? おんなじようにして、手紙を投げ返す。 さすがバレー部…しっかり受け取った。 後ろからノートをべりべり破る音が聞こえたかと思うと、すぐさま返事が来た。 あたしはもちろん、本人ですら予想外だったろうスピードでぶっ飛ぶ消しゴムは、あたしを通り越し、前の席の子の背中に衝突する事で勢いを失い、その子の「だっ」ナオの「あぶっ」の言葉と共に床に落ちた。 人間、突然の事態には変な奇声を発するものなんだ、って安心した。 再び手紙を開くと… | |好き!!>< | …あたしを?? いやいや… こんなやりとりをチャイムが鳴るまで続け、ナオが芳人くんにどれだけ惚れ込んでいるかがわかったのだ。 ちなみに… あたしは、自分の気持ちを誰にも打ち明けていない。 前へ |次へ |
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