《MUMEI》 私は、うつ向いている仲村君を、黙って見つめていた。 (やっぱり、優しいな…) その髪を、頭を、大丈夫だよと、優しく撫でてあげたくなった。 私の手が、ピクッと動くと、叩かれるのかと思ったのか、仲村君が、目をつぶった。 (…やっぱり) 仲村君の中では、私は『暴力女』なのだろう。 少し、胸が痛んだ。 それに、さっきから、屋代君が私を睨んでいる。 (そうだ) 私は、私が屋代君にした『提案』を思い出した。 私は… 『仲村君には、触れない』 と、誓ったのだ。 私は、手を膝の上に戻した。 …いくら、好きでも。 私に、仲村君に触れる資格は、無いのだ。 前へ |次へ |
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