《MUMEI》

「今日は、帰るわ」

「あぁ」

私の言葉に、仲村君は無言だったので、屋代君がかわりに返事をした。


―屋代君と二人でファミレスの外に出た時。

「悪かったな」

突然、屋代君が言った。

「何が?」
「いや、知らなくて…」

(あぁ…)

初めて居酒屋で会った時の発言を謝罪しているのだと、私は気付いた。

(意外と優しいんだな…)

「気にしないで」

私は笑顔で言った。

屋代君は、不思議そうな顔をしていた。

今まで、感情的になっている部分ばかりが目立っていたけれど…

屋代君は、本当は、人を思いやれる人間なのかもしれない。

(そういえば…)

屋代君は、介護福祉士として、老人施設に勤めているらしい。

だから、こういう屋代君が、普段の屋代君かもしれない。

ただ…

仲村君が、本当に、好きなだけなのだ、きっと。

その証拠に、帰ると言う私を気遣いつつ、すぐに仲村君の待つ店内に戻っていった。

私は、切なくなったが…

あの二人は、お似合いだと思った。

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