《MUMEI》
逃れられない過去
仲村君にメールをしてから、三日後の、夕方。

…今日は、久しぶりに三人で会う事になっていた。

(う…そ…)

待ち合わせ場所の西口階段下にいた私は、人混みの中に、『いるはずのない人』を見かけた。

時刻は、いつも通り待ち合わせ五分前。

私は、『その人』に見つからないように、東口に向かって歩き出した。

私のマンションからは、西口が近いが、仲村君の家は、東口が近い。

それに、屋代君も、東口の駐車場を利用する。

―行き違いになることはない。

もしかしたら、いるかもしれない。

(早く、早く、早く)

気が付くと、私は駆け出していた。

―『あの人』から、逃げる為に。

「…いない」

東口に、二人の姿は見当たらなかった。

―その時

グイッ!

私は、腕を引っ張られた。
「よう、久しぶり」

その声に、私の体が震え出す。

そして、私は。

『その人』に、引きずられるように…

東口トイレに、連れていかれた。

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