《MUMEI》

そこから、良幸さんの態度が豹変した。

最初は、食事の味付けとか、お風呂の温度とか、そんな、ささいな事を細かく指示するようになった。

「うちの、親父もお袋をこうやって、教育してきたんだ」

そう、自慢気にいつも言われた。

…良幸さんの父親は、良幸さんが子供の頃亡くなっていたから、詳しい事は、結婚前は聞いていなかった。

私が、良幸さんの命令を少しでも拒むと、良幸さんは、『調教』と言って、暴力を振るった。

服に隠れる部分を、殴る・蹴るはもちろん…

ジュッ

あの、『音』は今でも耳から離れない。

そして良幸さんは、私の浮気も異常に心配していた。

私が、良幸さんを本当に愛しているのか―


良幸さんは、常に疑っていた。

そして、『他の男に色目を使うから』と、私の外出を禁じた。

『俺の留守中に、男と話すな』と言われ、私は居留守を使うようになった。


異常な束縛。

日常的に繰り返される暴力。


それが周囲に発覚したのは、そんな生活が一年以上続いた頃だった。

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