《MUMEI》

「もう一度、やり直そう、…俺達」

良幸さんが、耳元で囁いた。

(断わらなくちゃ…
逃げなくちゃ…)

なのに、体が動かない。

(動いて!)

―その時。

私のバックから、携帯が鳴った。

(この着信音…)

仲村君、だ。

コール音が鳴る。

一回、二回、三回…


四回、五回…

「ちょ…」

良幸さんが、私の携帯を勝手に取り出した。

ピッ…

『もしも…』

ピッ…

ツー、ツー、ツー、…

良幸さんが、無言で、私の携帯を見つめた。

「なるほどね…」

そして、携帯の電源を切って壁に投げつけた。

パチンッ

「!」

「この、浮気者!」

良幸さんが、ナイフで私に切りかかってきた。

顔に激痛が、走った。

私は、気を、失った…

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