《MUMEI》

次に目が覚めた時。

私の視界に入ったのは、白い天井。

それから…

「お姉ちゃん!」

真っ赤な目をした貴子ちゃん。

(あの時みたいだな…)

私はぼんやりと、生死の境をさ迷ったあの日の事を、思い出していた。

「今、大兄さん、呼んでくるからね!」

貴子ちゃんが、パタパタと走っていった。

私は、ゆっくり、起き上がろうとした。

右手に点滴の針が刺さっていて、うまく起き上がれない。

それに…

左頬に違和感があった。

そっと、触れようとすると…

「触らない方がいい」
「大兄さん」

大兄さんが、私の手を掴んだ。

そして、横になるよう言われた。

(ここ…)

私は、やっと状況を把握した。

刺された私は、大兄さんの勤務する、地元で一番大きな総合病院に運ばれたのだ、と。

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