《MUMEI》

「おー、佐藤や。久しぶひー。」

内館先輩だ。

「お久しぶりです!」

本当に久しぶり。

「んだよ、顧問もいねーの?栄えない部活だなー!」

内館先輩はいつも俺の前に藤田が座る席にどかりと構えた。

「今日はどうしたんですか?」

俺の質問ではっとしたように立ち上がる。

「そうだ、佐藤も探して、俺が二年のとき準優勝した賞状!」

手を引かれその辺の棚を漁り始めた。一人でよくくるくる動く人だ。

はっきり言って棚は入学当初から触ったことがないくらいの物置、カオスだ。

「先輩、この辺新しいものが増えた記憶ないですよ。可能性としては放送室じゃないですか?」

部室が破壊される前に一応、忠告しておく。

内館先輩は額を一度叩いてから、

「それだ!」

とオーバーにリアクションを取った。

「さ、職員室行こかー。」

強引な人だ。
無理矢理なのに嫌な感じかしないのは人柄かな。

「……先輩って悩み事少なそうですよねー」

「厭味か?」

しまった、ぽろっと本音が漏れてしまった。
かなり、怒っている?

「あー……と」

言い訳出てこない。

「反省するか?」

耳元に内館先輩の激甘低音を聞きつつヘッドロックを緩くかけられた。

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