《MUMEI》 大兄さんが、私に休むようにと促した。 「あ、コンタクト…」 『はめたままだった』と、言おうとしたら… 「貸して。浸けとく」 貴子ちゃんが、手を差し出してきた。 ちなみに、私は、中学までは眼鏡だったが、今は、コンタクトレンズを着用していた。 「ん…」 私は、起き上がり、コンタクトレンズを外した。 視界が、ボヤける。 …視力のせいではなかった。 私は、無言で貴子ちゃんに、コンタクトレンズを渡した。 私の瞳から、涙が溢れてきた。 ―次から次へと。 「あ…れ…?」 体も、震えてきた。 「お姉ちゃん…」 貴子ちゃんに支えられながら、私は、ゆっくりと横になった。 目を閉じても… 涙は止まらなかった。 そんな私の耳元で、貴子ちゃんは― 「大丈夫だよ。 『あいつ』は捕まったからね」 と、教えてくれた。 (良幸さん…) 捕まったんだ。 私は、目を閉じて、ずっと、考えていた。 『私は、良幸さんを愛していたのだろうか』 ―と。 それを、考える時、いつも私の脳裏には、何故か、仲村君の顔が浮かんだ。 『これ』は、そんな私への罰なのだろうか… そんな風に、思いながら、私は眠った… 前へ |次へ |
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