《MUMEI》

私は元気だと、伝わるように、必死で起き上がり、ベッドに腰をかけた。

…必死な様子は決して悟られないようにした。

「お前、…」

「大した事ないのよ、大丈夫」

(大丈夫、大丈夫)

私は、大丈夫と、何度も心の中で言い聞かせた。

「跡とか…」
「うん、残るらしいの」

何度も、私は笑顔を作った。

「そんなわけで、カラオケは、退院してからね」
「あぁ…」

ベッドに座る私よりも、何だか仲村君の方が、病人みたいな声を出していた。

心配してくれてるのは、嬉しい。

(でも…)

甘えてはいけないと思った。

私は、弱いから。

一度、甘えてしまえば、うまく『仮面』が付けられなくなる。

「じゃあ、私、仲村先輩送ってくるから」
「うん、お願いね」

仲村君が、貴子ちゃんに腕を引かれながら、出ていったので…

私は、ため息をついて、ベッドに横になった。

体が、悲鳴をあげているのがわかった。

貴子ちゃんは、なかなか戻って来なかった、ようだ。
…私は、すぐ寝てしまったから、よくわからないが…
夢の中で、貴子ちゃんに、何か怒られた気がする。

『化け猫かぶり』とか…

私は、意味がわからなかった。

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