《MUMEI》 失態私が入院して一週間が過ぎた。 季節は、夏から秋になろうとしていた。 コンコンッ (この、丁寧な音は…) 「大兄さん?」 「よくわかったな」 白衣を着た大兄さんが、笑顔で入ってきた。 大兄さんは、暇を見付けては、私の様子を見に来てくれていた。 「わかるわよ。貴子ちゃんは、ノックしないし、秀兄さんの音はもっと大きいし…」 「…仲村君のは?」 「大兄さんに似てるけど、ちょっとだけ違うの…」 私は、照れながら、答えた。 「そうか…」 「うん」 大兄さんは、私のベッド脇にある椅子に座った。 ―その時。 誰かが病室の出入口をノックした。 大兄さんは、小声で、私に、 「この音は?」 と訊いてきた。 私も、つられて小声で、 「…仲村君」 と答えた。 「どうぞ」 私のかわりに、大兄さんが返事をした。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |