《MUMEI》

「俺を受け入れてくれたことは奇跡よりも貴重だ。
その二郎を俺は一生大事に出来たらいいと思う。」

……ごちになりました。
甘すぎだ。激甘。

「俺の友達でも一人いましたよ。」

別れたのはいつだったか。連絡先も聞けていない。

「へぇ、そうか。」

「そうです。」




無音。

「その友達幸せだな。」

内館先輩が口を開く。

「なぜですか?」

「俺とはチと違うが俺の性癖で二郎は戸惑った。両想いじゃなかったら絶交だったはずだ。
佐藤はちゃんと友達として認め合えたんだろ?それは中々出来ないことだ、佐藤はすげぇよ。」

それまでにはいろいろあった。俺はまだ夏川を許せていないかもしれないのに。
ほっとした。

「そうですか?」

誰かに間違っていなかったといってもらいたかった。

口ではうまく表せないけど当たり前に過ぎてく時間の中で抜け落ちた感情が溢れた。

夏川がいなくなった。
握手は別れだ。

怖かったのだ。
一人になることが、今も。
藤田がいないことが不安だ。

俺の知らない藤田がいることが不安だ。

藤田なら捨てない気がしていた。
裏切らないという気がしていた。

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