《MUMEI》

廊下の突き当たりに腰を下ろす。
木下先輩の双眸が俺を捕らえた。

話してもいいという合図だ。





「全部俺が悪いのかもしれません。」

そりゃそうか。

「佐藤を傷付けたの?」

唇に蕩けそうな触感と苦い味がした。

「裏切りました。」

友情を。

「後悔したの?」

「分かりません。俺はただ辛くて、裏切ればこれでもうすっきりすると思ったんです。でも全然そんなことはなくて、そのときの佐藤の顔が忘れられないんです。」

楽になんかならなかった。

より深いとこに嵌まるばかりだった。

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