《MUMEI》

「「お邪魔…します」」

恐る恐る入室してきたのは、仲村君と、…屋代君だった。

屋代君と会うのは、ファミレスで持病の話をして以来だったから、久しぶりだった。


大兄さんを見て、しばらく言葉を失っていた屋代君は、小声で仲村君と何か話していた。

(まぁ…)

大体、初対面の人は、大兄さんの容姿に、驚く。

慣れている私でも、眩しく感じる時がある。

「いらっしゃい、仲村君。こちらは?」
「あ…えと…」

仲村君が、どう言おうか迷っていると…

「慎の親友の屋代です。はじめまして」

と、屋代君が好青年風に、自己紹介した。

(『親友』、ね…)

多分、大兄さんは、仲村君と屋代君の『本当の関係』に気付いている。

大兄さんは、以前私の相談にのってくれているし。

でも、…

「そう。はじめまして。志穂の兄の大です。ゆっくりしていって下さい…仲村君もね」

大兄さんは、私の為に、気付かないフリをしてくれた。

「「は、はい」」
仲村君達は、二人同時に返事をした。

大兄さんは、椅子から立ち上がると、私の頭を優しく撫でた。

「じゃあ、志穂。またな。
何かあったら、ナースコールを押しなさい」
「ありがとう、兄さん」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫