《MUMEI》

「そんな事無いわよ。最近は、ちゃんと食べてるし」
私は、いつも通り明るく答えた。

…実際は、主食はお粥だし、量は、まだ、少なかったけれど。

それでも、点滴よりは、ずっとましだ。

すると、仲村君が、大兄さんが座っていた椅子に座った。

屋代君は病室の隅にあった椅子を持ってきて、仲村君の隣に座る。


「やっぱり痩せたんじゃないか?」


そう言いながら、仲村君は、

そっと私の方に手を伸ばし…

私の手首を、小麦色に焼けた手で、優しく、包み込むように、

…掴んだ。

「…な?」

『仲村君?』と言おうとした、私の顔を…

仲村君が、覗き込んだ。

近い。

顔が、近すぎる。

それに…

仲村君から、手を掴んでくるなんて、

…予想外だった。

(…まずい)

私は、顔が赤くなっていくのを感じていた。

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