《MUMEI》

(だから、まずいって!)

そんな私の思いとは、裏腹に、体温は急上昇していった。

…入院中は、私はすっぴんで。

化粧で誤魔化せないし。

ここは、カラオケボックスのように、暗くもなかった。

(もう、ダメだ〜)

「た、高山〜?!」

(あぁ…)

仲村君が、呆れているのに…

プシュ〜!

完全に、私はゆでダコ状態で、混乱していた。

(は、恥ずかしい…)

私は、自由な右手で掛布団を掴み、顔を隠した。

左手は、仲村君に掴まれたままの状態だ。

きっと、掴んだ手首からは、異常なまでの私の脈拍が、仲村君に伝わってしまったと思う。


「え…と、はな、して?」
私は、やっと、それだけ言った。

…掛布団の隙間から、僅かに顔半分を出して。

仲村君は、無言でしばらくその手を掴んでいた。

私から、仲村君の手を振りほどくなんてできなかった。

(だって…)

きっと、こんな機会、滅多にない。

もしかすると、二度とないかもしれない

…勿体なくて。

恥ずかしいのに、私は手を振りほどけなかった。

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