《MUMEI》 その時、病室の出入口から、拍手が聞こえた。 「おぉ、さすが。見事に剥がれてる」 「…」 (全部、見てたな…) 私は無言で、頬を膨らまし、うらめしそうに貴子ちゃんを見つめた。 「…誰?あの、迫力美人は」 「高山の妹」 「あぁ」 仲村君の説明で、貴子ちゃんが『高山秀の美人の妹』だと、屋代君はすぐに理解した様子だった。 「貴子ちゃん、ひどい」 私は、急に仲村君が『あんな事』をした原因が、貴子ちゃんだとすぐに気付いた。 「ひどいのは、お姉ちゃんの化け猫かぶりでしょう?」 貴子ちゃんは私に歩み寄ると、笑顔で、私の額をつついた。 そして、仲村君達の方を向いた。 「こちらが屋代君、ですよね?はじめまして、妹の貴子です」 「はじめまして。…似てるね、さすがに」 「当たり前ですよ!」 屋代君の言葉に、貴子ちゃんが大声で答えたから、仲村君達が驚いていた。 それから、私を睨むと、貴子ちゃんは、マシンガントークを開始した。 (あぁ…) せっかく、うまく演じてきたのに。 私は、頭を抱えた。 前へ |次へ |
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