《MUMEI》

貴子ちゃんは、一通り『本来の私』を暴露した後…

「仲村先輩なら、剥がしてくれると思いましたよ」
と言って、笑った。

「何で?俺?」

「それは…」

(ちょっと…)

私が貴子ちゃんを止めようとした時。

「慎、そろそろ帰るぞ!」
屋代君が貴子ちゃんの言葉を遮って、立ち上がった。
(良かった)

私はホッとした。

「祐希…でも、まだ…」
「そ、そうね、私も今日は疲れたし…」

仲村君の言葉に、慌てて私は、屋代君の言葉に賛同する発言をした。


「…じゃあ」

(…あ、)

私は言いたい事があって、立ち上がる仲村君の上着の裾を、掴んでしまった。

「…何?」
「…今日はごめんね、いろいろ。また、…会ってもらえる?」

仲村君を見上げながら、私は少し涙目になってしまった。

「う、うん」
仲村君は、困ったような返事をした。

(やっぱり、嫌われたかな?)

私は少し悲しくなった。

「俺は?」

屋代君が仲村君の肩を抱きながら質問した。

「もちろん、三人でよ」

私が笑いながら答えると、屋代君は何故か安心した様子だった。

何故、安心なのかは、よくわからなかった。

そんな私達を、貴子ちゃんは不思議そうに眺めていた。

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